血管脈波測定装置(動脈硬化測定装置)を導入しています。血管年齢を測定して、動脈硬化の進行を防ぎます
1 血管年齢(動脈硬化度)を知りましょう
当院では、フクダ電子製VaSera VS-2000血管脈波測定装置を導入しております。ゆっくり横になって約4分で測定が完了します。血圧を測る要領での測定ですので、痛みのない検査です。動脈の硬さ、動脈の詰まり具合、血管年齢を測定します。
動脈硬化は症状がほとんどなく進行することから、“沈黙の殺人者“とも呼ばれています。血管年齢を知ることによって、次に紹介します様々な病気の早期発見や進行予防にむけた取り組みが可能となります。
2 血管脈波測定装置での測定項目
動脈の硬さ(CAVI)、動脈の詰まり具合(ABI) に基づき、血管年齢を算出します。
動脈の硬さ(CAVI)は心臓から押し出された血液によって起きた波動が手や足の血管に伝わる速度を測定して算出します。動脈が硬くなるとこの波動が早く伝わります。
動脈の詰まり具合(ABI)は、上腕と足首の血圧から算出します。下肢の動脈硬化の場合はこの値が低くなります。
血管年齢は、同じ性別、同じ年齢の健康な方のCAVI平均値と比べることで算出します。血管年齢の高い方は、動脈硬化の進行が早いといわれています。
3 動脈硬化が引き起こすさまざまな病気
動脈硬化は体のどこかの血管だけでおこるのではなく、全身の血管で変化が起っていきます。したがって、体の中の様々な病気を引き起こすといわれています。
1)虚血性心疾患
狭心症や心筋梗塞が虚血性心疾患の代表疾患です。心臓を栄養する冠動脈に動脈硬化の変化が起こることで、血流不足が生じて心臓の機能が低下します。なかでも、心筋梗塞は、冠動脈の一部が完全に閉塞して血流がなくなってしまう病気です。
2)脳卒中(脳出血や脳梗塞)
脳出血は、脳内の血管が破綻して出血する病態です。動脈硬化によって脳内の動脈がもろくなることが原因の一つです。脳梗塞は、脳の一部で血流が極端に不足したり、血流がとだえることによって脳組織が機能しなくなる病態です。動脈硬化によって脳内の血管が細くなり血流が少なくなることが原因の一つです。
3)大動脈瘤
胸部や腹部の大動脈の壁が弱くなり、血圧に耐えられなくなって血管がこぶのように膨らむ病気です。自覚症状がなく徐々に進行する場合や、激しい痛みで急激に発症する場合もあります。血管のこぶが破裂すると命にかかわりますので、早期発見での対応が望まれます。
4)閉塞性動脈硬化症
足の動脈硬化が進行し、血流量が十分でなくなると、下肢のしびれ、冷え、痛みなどが生じます。早期に発見すると、バルーンを用いた血管拡張やステント挿入による血管拡張などの血管内治療で症状が改善できることがあります。進行すると、足の壊死がおこり、足の切断を必要とすることもあります。
5)腎硬化症
腎臓を養う動脈の動脈硬化がすすむと、腎臓は硬くなり、また萎縮をしていきます。腎臓の働きが悪くなり、全身に影響がでてきます。透析治療が必要になる場合もあります。
6)高血圧症
血管が硬くなる主な原因の一つとして、血液中の悪玉コレステロールや中性脂肪が高い状態が挙げられます。この状態が長く続くこと、高血圧の発症と密接に関連します。高血圧症の合併は、1)—5)の病気の進行を加速するだけでなく、糖尿病の発症が2-3倍高くなるといわれています。
4 動脈硬化の進行を食い止めるには
適度な運動と適切な食事が動脈硬化予防には欠かせません。 しかし、LDL-コレステロールまたは中性脂肪が高いと動脈硬化が進んでいく可能性があります。 血液検査結果によっては、LDL-コレステロールや中性脂肪を下げる薬を服用することもあります。 中性脂肪を下げる効果のあるDHAとEPAを含む内服薬も登場しています。
動脈硬化が進んでおられる場合は、脂質異常症、高血圧、閉塞性動脈硬化症などの治療薬や、脳梗塞や心筋梗塞の予防薬を服用する場合があります。