宗教画はおろか西洋史の知識も極めて少ない私にとって、楽しく宗教画を解説してくれる本でした。ミケランジェロが描いたシスティーナ礼拝堂の天井画の一つ“アダムの想像”では、アダムの臍についての解説が私にとっては目からウロコでした。粘土細工のように土から創られた最初の人類—アダム—になぜ臍が描かれているのか。母体から生まれたわけではないのに、ミケランジェロは筋肉が詰まった質感たっぷりのアダムの腹部に凹んだ臍を明瞭に描き込んでいます(表紙写真)。カトリック総本山バチカンがそれでよしと承認しているのは、美的な観点からなのか。
楽しく読ませてくれる、そして、楽しく理解させてくれることへの著者の気配り満載の姿勢に感激しながら、西洋絵画への親しみを持たせてくれた本でした。