KawasakiのバイクGPZ900Rでサンディエゴcoast沿いの道を疾走するのが印象深かったトップガンの続編。映画館で観るチャンスには恵まれず、アマゾンプライムで観ています。この続編を作るのに36年という期間を費やしたとのこと。映画としての私の評価は、過去最高レベルでした。
戦闘と娯楽、過去と未来、地位の上と下、嫌悪と愛好、新型と旧型などの対比が複雑にからみあうように、しかし流れるように描写されており、感動の映画でした。前作トップガンで活躍した戦闘機F14が、”museum piece”(博物館展示レベルの旧型)と表現されてながらも終盤で登場。敵国から奪い取ったF14をマーヴェリックとかつての相棒の息子ルースターが巧みに操縦するシーンには思わずうなづき。そして映画全編で日常英語であまり出会わない(と私は感じている)表現がたくさんあり、勉強を兼ねて60回くらいは観たでしょうか。そろそろセリフもそのまま覚えるようになってきましたが、観るたびに新しい気づきと感動があります。そのような感動のトップガン マーヴェリック。特に、いいなあーーと思う場面をいくつかご紹介します。

① マーヴェリックと相棒Hondoが声を掛け合う出撃前のシーン
出撃準備が完了していざという緊張感満載の中、マーヴェリックの活躍を常に見守ってきたHondoが”Hey, you with me?”と声をかけます。表情の複雑さ、アイコンタクトの奥深さ、トム・クルーズとバシール・サラフディンの名演技に感動。
最もシリアスな場面で、この映画の中核となっています。そして次のマーヴェリックの一言へと続きます。”If I don’t see you again, Hondo, thank you.” 日本語に訳すと“生きて戻れないだろうから、ありがとうと言わせてくれ”になるでしょうか。字幕ではIfを生かして”もし会えなければーーー“と訳されていました。個人的には覚悟を決めた出撃、つまり生きて帰還することは前提としていないことを伝える一言と感じました。マーヴェリックが背負ってきた苦労を全て詰めこんで相棒へと言葉を送る名シーンでした。

② 任務を終えて着艦するクライマックスシーンでの音楽展開
上述のF14でマーヴェリックとルースターが帰還します。前作トップガン でも音楽を担当した Harold Faltermeyer作曲のTop Gun Anthem(You’ve Been Called Back to Top Gun)を背景に、前輪は折れ、空母甲板で停止させるテールフックは欠落、エンジンは2つとも停止の状態で、甲板に設置されたバリケードに突っ込むように着艦。そして、生きて帰ってきたことを喜ぶシーンへと続きます。着艦してキャノピー(風防)が開いて歓喜が始まると同時に、オーケストラサウンドがLady Gaga作曲のHold My Handのイントロへと転換します。映画を見ている我々には、非現実の世界から現実の世界へ戻ったことをゆっくりと気づかせてくれているように感じますが、その曲の移り変わりがやさしくて丁寧であることに脱帽。
ちなみに、マーヴェリックがF14から降りて最初に肩を引き寄せるのが前述のHondo。チームワークの意義を伝える映画としてもよく構成されていると感じました。

③ アメリカ合衆国という国
医療界も産業界も、日本はアメリカ合衆国と、時には連携し、時には協力し、そしてたえず影響を与え合いながら発展していると思います。ですから、アメリカという国の特徴をその時点において理解をすることは大切と考えています。現在私は、とある国際医学会議を企画しており、その経過の中でもアメリカ代表、EU代表の人たちとの会議の際には、いろいろな社会背景を頭におきながら、言葉を選んで発言しています。

さて、この映画では、とある国がその国の領土内山中にウラン濃縮施設を造ったことが攻撃の理由となっています。核爆弾を製造したのではなく、製造した核爆弾で核実験を行ってアメリカ領土に被害を及ぼしたわけではありません。被害がアメリカ領に発生していません。近い未来に驚異となる(かも知れない)施設を造った他国を、山ほどのトマホークミサイルで軍空港施設を爆撃し、戦闘機でウラン濃縮施設を爆破するストーリー。予告もなく突然の爆撃です。トム・クルーズが36年を掛けて熟成させた映画として、アメリカを代表するシナリオとして理解していいでしょう。観られた方の受け止め方はそれぞれ異なるものですが、アメリカ合衆国を理解するにあたって、このシナリオは頭の片隅に置いておくことは大切かも知れません。医学においても、よく似た事象をこれまでに体験も見聞きもしてきたことを思い出しました。