Part1では体内の鉄分不足は、貧血に加えて息切れや動悸、皮膚のかさつきなど様々な症状と関連することをお伝えしました。本項では、命に関わる臓器の病気進行と鉄不足の関連についてご紹介します。この度の2024年11月8日の学会講演では、鉄補充治療を行った際に、心臓病や腎臓病の安定につながると予想される体内作用が発揮されるタイミングは、貧血改善効果の発揮と比べてかなり早期の段階であることを発見し発表しました。
心臓が悪いことを示す心不全、腎臓が悪いことを示す慢性腎臓病という病気をよく聞かれると思います。心不全は、心筋梗塞などにより急に発症する急性心不全と、高血圧の持続、弁膜症、不整脈、心筋症、心筋梗塞後の心機能が低下状態などによる心臓への負担が持続し、徐々に機能が悪化する慢性心不全の2つの病態があります。慢性腎臓病は、高血圧と糖尿病が主な原因で、他には腎臓の形態異常(多発嚢胞腎など)や腎臓の炎症(糸球体腎炎)などが原因の場合もあります。両疾患共に命にかかわる病気ですから、病態の進行を防ぐことが重要です。
心不全、慢性腎臓病共に、貧血の発生と関連することが多く、体内の鉄欠乏をしばしば伴います。欧米での数々の臨床研究によって、急性心不全、慢性心不全、慢性腎臓病の全てにおいて鉄補充治療により病気の進行を防ぐことができ、そして、患者の生命予後の改善に繋がると報告されてきました。この度の私共の研究成果から、それらの鉄による効果は、貧血改善以外に、体内での鉄に関連する未だ知られていない様々な作用が総合力として発揮される影響と考えられるものです。日常診療において、血液検査で体内鉄動態を時には把握し、適宜良好な値を保持することは、人生の様々な局面で良い結果につながる可能性を秘めているものです。
過去の鉄動態に関する学会活動について
腎臓病治療についての医療講演を行いました
貧血の診断と鉄補充治療についてのWeb講演を行いました