本日は消化管最初の消化液でもある唾液についてのお話しです。お口の中をいつもうるおしてくれている唾液ですが、実はいくつもの重要な働きをしています。唾液の働きの代表的なものについて紹介します。

① 食塊形成作用—食べたものを適当な塊にすることで、飲み込みをしやすくします。
② 食物の消化作用—唾液に含まれる酵素(アミラーゼ)によって、糖質を分解して消化吸収をよくします。
③ 味覚調整作用—食べた物の味物質が唾液にとけて味蕾という味覚受容体に届けられることで食事の味(甘味、うま味、苦味など)を感じます。唾液は味蕾を保護する作用もあります。唾液が十分にあることが、味覚を正しく保つのに必須です。
④ 口腔粘膜保護作用—食物などで口腔粘膜が傷つくのを防ぎま。また、熱傷などの傷の治癒を促進させる増殖因子が含まれています。
⑤ 口腔内や胃内の酸中和作用—唾液には重炭酸塩やリン酸塩などの緩衝成分がふくまれていて、口腔内や胃内の酸性度をよわめています。このことで、虫歯を予防したり、胃酸逆流で発生する逆流性食道炎を予防したりします。
⑥ 生体防御作用—お口は細菌やウイルスが容易く侵入します。これらの菌に体がおかされないように、唾液に含まれるリゾチームは抗菌作用を発揮します。

2019.1.26(土)17時〜、桜宮で開催された高齢者医療研究会に参加し、大阪大学歯学部顎口腔機能治療部教授の坂井丘芳先生から、ドライマウスの成因と治療についての講演を聴きました。

お口が乾いてつらい、唾液が少なく感じるなどでお悩みの方も多いとお聞きします。口が乾いてうまく話せないことがある、食事を飲み込むのに飲み物が必要、という症状は、ドライマウスである場合があります。ドライマウスは、シェーグレン症候群などの病気の

1症状な場合もありますが、内服薬の作用によることもあります。例えば、過活動性膀胱、胃薬、抗不安薬、風邪薬の一部分の薬では、抗コリンという薬物作用によって唾液をつくる大事な経路をブロックしてしまい、ドライマウスを引き起こすことがありますので注意が必要です。当院では、高齢の方の診察では特に、ドライマウスが発生しにくいお薬の選択も念頭において、治療にあたっております。