朝の診察が始まる前のコーヒー1杯、午後休憩時間での1杯など、コーヒーは日常のいろいろな場面で私の生活に心地よいリズムを作ってくれています。同じ焙煎豆であっても、挽き方、お湯の温度や量、淹れ方、抽出の時間などによって、まったく異なるコーヒーができあがります。味、香り、飲んだときに感じる風景や風、気持ちの安らぎや高まり。寄り添ってくれるようなコーヒーが心地よいと感じる時もあれば、魅惑的にあるいは挑戦的に刺激してくれるコーヒーを心地よく感じる時もあります。奥が深く、不思議な飲み物と感じます。
さて、そのようなコーヒー。飲むことでの体の影響は如何なるものか気になるところです。国立がん研究センターが主導で行った調査研究結果が報告されています。対象は、11都市(吹田市、葛飾区など)に住む40歳〜69歳の9万人で、およそ20年間の調査に基づく研究です。結果は、1日に飲むコーヒー杯数が0から4までは、杯数が多いほど全死亡(がん、心疾患、脳血管疾患、肺疾患の死亡)発生率が少ないという結果でした。また、その4疾患別の検討では、がん死亡には差異がみられないものの、心疾患(心筋梗塞や心不全など)、脳血管疾患(脳出血や脳梗塞など)、肺疾患(慢性閉塞性肺疾患COPDなど)いずにおいても杯数が多いほど死亡率が少ないという結果でした(図)。
このコーヒーによる死亡リスクを下げる効果は、コーヒーに含まれるクロロゲン酸とカフェインによる作用がその一部として推測されています。クロロゲン酸は、血糖値の改善、血圧の調整効果があると報告されています。カフェインには、血管内皮機能の改善(動脈硬化の進行予防につながる)と、気管支拡張による肺機能改善効果があるとのことです。
これらの研究報告から、コーヒーを飲むことは、1日4杯までであれば、少なくとも寿命に悪影響はなさそうと考えて良いと思われます。5杯以上になると、4杯以下と比較して死亡率が悪化する疾病もみられますので、飲む量は適度な範囲がよろしいかと思われます。なお、本研究は、コーヒーの種類(缶飲料、インスタント飲料、レギュラー飲料、カフェオレ、カフェイン有無)を分けた解析ではありませんので、どの種類がどれだけ結果に寄与するかについては今後の検討課題です。