糖尿病と密接に関連する血液検査項目として血中HbA1C(ヘモグロビン・エイワンシーと読みます)値をご存知の方も多いと思います。血液中を流れるブドウ糖の余剰分は血液を流れる赤血球内のヘモグロビンという蛋白と徐々に結合します。ブドウ糖と結合したヘモグロビンを糖化ヘモグロビンとよびますが、一度結合すると赤血球の寿命(約120日)まではずれることはありません。ですので、全体のヘモグロビンに対する糖化ヘモグロビンの割合を算出したものがHbA1Cで、高血糖状態を反映します。赤血球には生まれたてのものも含まれているので、HbA1C値は直近1-2ヶ月間の血糖状態の平均値を反映します。
HbA1C値が5.6以上であれば将来的な糖尿病リスクが懸念されるため、運動療法などをお勧めします。6.5以上の場合は、食事・運動療法を積極的に行い、HbA1C値が依然高い場合は、内服薬服用の検討も行います。糖尿病薬は、作用機序別に大まかに7種類に分類されますが、患者様の年齢や病状を基に、1-4種類の内服の組み合わせで治療を組み立てるのが一般的です。
2020.1.23(木)20時〜、難波で開催された大阪市糖尿病治療勉強会に参加し、大阪市立大学内代謝分泌病態内科講師の森岡与明先生から、高齢者の糖尿病治療において考慮すべきポイントについての講演を聞きました。一般には糖尿病治療のHbA1C目標値は7.0を下回ることですが、高齢者に限定した場合にはその値が8.0となります。つまり、高齢者では、内服薬治療も含め、やさしめの糖尿病治療がより適していると理解されています。これは、食事があまりとれない日などに低血糖になることを防ぐことや、薬剤に起因する腎臓などの臓器障害を起りにくくすることが大切だからです。
J-EDIT研究と名付けられた日本で実施された臨床研究があります。65歳から84歳の国内糖尿病患者さん1173名のデータ解析からHbA1C値と脳卒中や糖尿病関連の事象の発生リスクの研究した研究です。HbA1Cが7.3以下の群と7.3〜8.8の2群の比較では7.3〜8.8の群で脳卒中などの発症リスクが低いという結果でありました。8.8以上の群では脳卒中などを高率に発症されます。このことは、高齢者では7.3以下を目指すよりも、もうすこし緩めの目標(7.3〜8.8)を考慮していいことを示唆しています。もちろん、患者様個人個人で状況が異なりますので、より適切な治療目標をご相談しながら診療ができればと考えております。