2019.7.13(土)17時〜、堺で開催された病診連携皮膚科の会に参加し、島根大学医学部皮膚科講師の千貫(ちぬき)祐子先生(写真上)による「知っておきたいスキンケアとアレルギー予防」の講演を聴きました。千貫先生は、(旧)茶のしずく石鹸で発症した小麦アレルギーのメカニズムを解明した方。講演を聴くのは今回で2度目。前回は蕁麻疹治療について、今回は、皮膚から感作されるアレルギー発症についてでした。2回の講演ともに翌日からの診療にエネルギーをいただける明晰で熱い講演でした。発症原因が未だ判っていないアレルギー状態はたくさんありますが、その中の1例1例を熱心に追求することで解明した最新情報を、あたかも一緒に研究しているかのようなライブ感をもって伝えていただきました。今回の講演で学んだ一部を簡単にご紹介します。

  • 牛・豚の食物アレルギーは血液型A型とO型の人が発症。 最新研究によると、牛・豚のアレルギーはタンパクに含まれる糖鎖a-gal(ガラクトース アルファ1,3ガラクトース)に対する反応がほとんどのため、血液型抗原としてガラクトースを有するB型およびAB型の方は、牛・豚タンパクへのアレルギー反応がまず起らないと考えられるようになってきています。
  • ダニに噛まれることで牛・豚のアレルギーが発症することも。 マダニやツツガムシに噛まれると、唾液に微量ながら含まれるa-galが体内に注入され、抗原感作されてしまうことがあります。その場合に牛・豚を食べたると、食後2-6時間ほど経過してからアレルギー症状を発症することがあります。飼い犬を介してや河川敷での散歩などでしらない間にマダニに咬まれることに要注意です。
  • スキンケアの徹底はアレルギー・蕁麻疹の予防にもつながります。 イギリスの小児科医Lack先生が、アレルギーの成立に経皮的な抗原(タンパク)感作がアレルギー発症の原因となり得るという概念を2008年に提唱しました。この概念を基にした研究がすすみ、料理人が扱う魚タンパクが皮膚から感作して発生する魚アレルギー、コックさんが扱うレタスが皮膚から感作して発生するレタスアレルギー、(旧)茶のしずく石けん使用後に発生した小麦アレルギーなどが抗原の経皮感作が原因であることが判明してきました。まだまだ未解明な経皮感作がたくさんあると予想されることから、様々な食物アレルギーや蕁麻疹を防止するためにも、スキンケアを日頃から徹底して皮膚のバリア機能を良好に保つことが大切です。