健康診断の血液検査でクレアチニン値がやや高い、あるいは、eGFRという腎機能指標が低値にて腎機能異常を指摘されることがあります。また、尿検査での蛋白陽性判定も、腎機能に気を配るべき結果です。腎臓の機能を障害する因子は様々で、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、高尿酸血症、塩分の過剰摂取、たんぱく質の過剰摂取、喫煙、ストレス、糸球体炎症を発生させる腎症という病気など多くの要因が複雑に関連します。腎臓が悪くなる病態が継続すると、人工透析という血液浄化が必要になることも危惧されます。透析導入を予防することも、腎臓病治療の目標の一つともされています。
そこで、腎臓病に対するクリニック等地域診療への情報発信を目的に、大阪急性期総合医療センター腎臓・高血圧内科主任部長の上田仁康先生、辻村循環器内科院長の辻村英一郎先生と共同で、大阪市の医師・医療関係者を対象とした腎臓病についてのweb講演を企画しました。2022.10.22(土曜)17:00〜、私からは、「腎臓を構成する様々な細胞の機能をいかに把握して適切な治療に結びつけるか」についての講演を行いました。腎臓は尿を作って物質を排泄する仕事以外に沢山の機能を担っています。そのため、腎臓は尿を作るネフロンと呼ばれる組織に加え、骨髄に赤血球を作らせる物質のエリスロポエチンを分泌する細胞、血圧を調整するレニンを産生する細胞、骨を維持するためのビタミンDを産生する細胞など、様々な細胞で構成されています。それらの細胞群が全体として健康な状態を保つ工夫は、腎機能の維持を目指す医療として大切であることを論じました。