糖尿病は、血液中の糖濃度(血糖値)が通常より高い状態となる病気です。血糖値が高い状態が続くと、血管が徐々に傷つき将来的には心臓の病気、網膜の病気、腎臓の病気、下肢の病気などの合併症が進行し、時には生命の危険に結びつくこともあります。
糖尿病合併症の中で、特に腎臓の障害は高頻度で関連しまう。腎臓は傷つきやすく、なんら自覚症状がない状態で進行していきます。腎機能が低下すると、元に復帰することはありません。腎臓は血管が豊富に複雑に入り組んだ臓器で、血液から尿を作るだけでなく、体に必要な成分を腎臓内で作られた尿から再吸収して体内に戻すという極めて複雑な働きをしています。ですから、血糖値が高いことによって血管に傷がつくことと、血管が豊富な腎臓がダメージを受けることがダイレクトに結びつくことは、ご理解いただけると思います。
腎臓のダメージが高度に進行すると、透析医療導入を検討する段階となります。日本透析医学会の統計では、糖尿病が原因で透析導入する患者さんの数は、大阪府では人口100万人あたり1年で約145人。都道府県別の人口比透析導入患者数では、徳島県が最も多く、島根県が最も少ない、そして大阪府は多い順で10番目です。ですから大阪府の糖尿病医療の取り組みとして、適切な糖尿病治療によって少しでも透析導入を防ぐように腎臓の機能を維持することが望まれています。つまり、血糖が高い状態を1ヶ月でも早く解消する、つまり、1ヶ月でも早く糖尿病治療を開始することが、腎臓の保護の観点でも望まれます。
2024年3月9日、淀屋橋で開催された大阪糖尿病ミーティングに参加し、群馬大学生態調節研究所教授の白川純先生から、ヒト(人間の)膵島を用いた機能解析から考える糖尿病治療展開についての講演を聞きました。当院の糖尿病日常診療においては、研究分野から発信される新情報を組み合わせながら、すこしでも効果を感じる糖尿病治療、そして腎臓をなるべく守ることを目指して取り組んでいます。