2018.07.12 (木)16:00-、

東京大学で開催された第25回肝細胞研究会のシンポジウムで「臓器幹細胞としての肝細胞がおりなす臓器創生」と題しての講演をしてきました。先端医療が日々進歩する中、組織や臓器を創るという研究は、30年・50年先を見据えた未来医療の究極の目標の一つと認識されています。私は、23年に渡り、肝臓を生体内に創る研究を勢力的に行い、この度、マウス動物実験において、腹腔内に大きな肝臓を創ることに成功しました。立体臓器の肝臓を創った世界で初めての成功例です。論文として掲載された本成果は、後ほど改めてご紹介させていただきます。

肝臓という高機能かつ複雑な臓器を創りだすことはほぼ不可能と考えられていた中で、工夫をすれば実現可能であるということを示すことができたことは、今後の医療の発展にとても重要な一歩です。奈良県立医大、東京女子医大、スタンフォード大、ワシントン大、ピッツバーグ大など多施設の研究者の英知が集結して実現した成果であり、ここに感謝申し上げます。また、この成功をさらに発展させるために、休診日の水曜日には、大阪大学薬学研究科の招聘教授として、研究活動に微力ながら取り組んでおります。

肝細胞研究会は、肝臓を構成する様々な細胞(肝細胞・類洞内皮細胞・星細胞・胆管細胞など)の基礎的・臨床的研究を通じて、肝臓病の解明や治療開発に新しい発信を行う研究者で構成されている研究会です。慢性肝炎から肝硬変への進行をいかにして防ぐか、病気の肝臓を早く再生させて治癒させるか、生活習慣病としての脂肪肝や肝炎の進行を食い止めるか、なども研究会の討論課題です。研究会は、東大赤門の右手すぐにある、伊藤謝恩ホールで開催され(写真上・下)、肝臓の世界的研究者と有意義な情報交換ができました。